防犯カメラで万引き犯を捕まえられる?効果的な対策とは?
商品を販売する仕事を行っている方にとって、警戒しなければならないのが万引きです。すでに万引き被害がある場合は、早急に対策を取らなければなりません。
対策として多くの方が検討するのが、防犯カメラの導入です。ただ『防犯カメラで本当に万引き犯を捕まえられるのか』と疑問を持つ方もいるでしょう。
そこで、防犯カメラの導入を悩んでいる方のため、万引き対策にどのように役立つのか解説します。そもそも万引きとはどのような罪なのか、具体的にどういった対策を取れば良いのかもわかるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
防犯カメラで万引き犯を捕まえられる?

防犯カメラに万引きの犯行が記録されているからといって、それだけで犯人の身元特定はできません。もちろん、犯人と知り合いだったり、従業員が犯人の情報を持っていたりする場合は別ですが「犯行映像を撮影していた=逮捕」にはならないと理解しておきましょう。
ただ、他の情報と照らし合わせて犯人を特定する目的では大いに役立ちます。基本的に、万引きは現行犯逮捕が基本です。これは、万引き行為をした人を後から特定できたとしても、その人が確実に商品を盗ったことの証明が難しいためです。
しかし、防犯カメラで万引きの証拠を捉えておけば、身元が判明した際に犯行の証明が可能です。何か商品を購入する際にクレジットカードや電子マネーを使っていればその決済情報も犯人特定に役立つため、これらと結びつけて後日の逮捕につなげられる可能性も高いといえるでしょう。
防犯カメラで撮影可能なのは、犯行時の映像だけではありません。 たとえば、店の外に設置したカメラによって犯人が乗る車のナンバーを特定することも可能です。万引き犯を特定したり、逮捕につなげたりするための情報を得るためにも防犯カメラが活躍します。
防犯カメラで万引きが発覚するとどうなる?

防犯カメラを使用して万引き犯を突き止めたい、逮捕につなげたいと考えているのであれば、防犯カメラによって万引きが発覚した後のことについて理解しておきましょう。全体的な流れを解説します。
警察の捜査により身元が特定される
店舗側から万引きの被害届が出されたあとは警察が捜査を行い、ここで防犯カメラが使用されます。実際に、防犯カメラの映像が決め手となり、犯人が特定されたり、逮捕につながったりすることも珍しくありません。
警察には捜査情報を得る目的で公的機関や公共の団体に対し情報収集を行う「捜査関係事項照会」の実施が認められています。この権限を用いて周囲にある防犯カメラの映像や、その他証拠の収集が可能です。
ここから身元が特定されることがよくあります。
逮捕、または容疑者の取り調べが行われる
身元が特定されたあとは、逮捕、または任意の取り調べと進みます。基本的に警察の捜査は任意の方法で行われることになるので、容疑者を呼び出したうえで取り調べを行い、終了後は帰宅させるのが原則です。
たとえば、防犯カメラの映像だけでは決定的な証拠といえないようなケースでは、取り調べの中で容疑を確認していくことになります。また、防犯カメラで犯人が特定されても、即逮捕されることは少なく、まずは任意で取り調べが行われることが一般的です。
ただし、万引きしたことが明らかである場合や、任意での呼び出しでは逃亡したり証拠を隠滅したりする恐れがある場合は即逮捕もありえます。他にも過去に万引きで捕まったことがある場合も即逮捕となることがあります。逮捕後は留置所に収容されたうえで取り調べを受ける形です。
なお、犯人がお店側に謝罪し、示談金を支払うなどの形で被害届の取り下げを願い出ることがあります。取り下げが認められた場合、示談書に署名し捜査の継続を求めない意思を示しますが、必ずしも捜査が終了するわけではありません。
被害届はあくまで被害を報告するものであり、それを取り下げたからといって犯罪がなかったことになるわけではないからです。被害の規模や内容によっては警察が捜査の続行を必要と判断し、場合によっては刑事処罰まで進むこともあります。
逮捕後に起訴すれば刑事裁判になる
警察による身柄拘束は最長48時間、検察官による拘束は最長24時間と定められています。ただし、この期間内に罪を認めなくても、処罰されないわけではありません。
身柄を拘束して取り調べる必要があると判断された場合、検察官が勾留請求を行います。これが認められれば身柄拘束期間が原則として10日間、最大20日間まで延長されます。
一般的に万引きで後日逮捕された場合、勾留請求となるケースは多くありません。ただし、犯罪の件数が多い場合は勾留請求されることもあります。
勾留期間終了までに、検察官が起訴するかどうかを判断します。起訴とは、裁判所を開始することと考えるとわかりやすいでしょう。不起訴となれば刑事裁判は見送られることになります。
起訴されて刑事裁判となった場合、裁判官は証拠に基づき、有罪か無罪かを審理します。その結果、有罪となった場合は法律によって定められた範囲内で量刑が言い渡される流れです。
なお、基本的に起訴処分がくだされた場合は、その時点でほぼ有罪になると考えておきましょう。
万引きの発生状況

実際に万引きはどの程度発生しているのでしょうか。警察庁によると、万引きの認知件数は以下のように推移しています。
年次 | 件数(件) |
---|---|
平成26年 | 121,143 |
平成27年 | 117,333 |
平成28年 | 112,702 |
平成29年 | 108,009 |
平成30年 | 99,692 |
令和元年 | 93,812 |
令和2年 | 87,280 |
令和3年 | 86,237 |
令和4年 | 83,598 |
令和5年 | 93,168 |
参考:(PDF)警察庁:令和5年の刑法犯に関する統計資料[PDF]
平成26年と比較すると、近年は件数が少なくなっています。ただ、年々少なくなってきていたのが令和5年になると増加に転じていることがわかるでしょう。警戒が必要です。
万引きの検挙率
続いて検挙率についてです。まず、万引きの検挙件数は以下のとおりとなっています。
年次 | 件数(件) |
---|---|
平成26年 | 86,784 |
平成27年 | 82,557 |
平成28年 | 78,131 |
平成29年 | 75,257 |
平成30年 | 71,330 |
令和元年 | 65,814 |
令和2年 | 62,609 |
令和3年 | 63,493 |
令和4年 | 58,283 |
令和5年 | 62,675 |
参考:(PDF)警察庁:令和5年の刑法犯に関する統計資料[PDF]
たとえば、令和5年の場合、認知件数が93,168件、検挙件数が62,675件であるため、単純計算で検挙率は67%ほどとなります。検挙率は70%前後の年が多いため、このくらいと考えましょう。
残念ながら、検挙率が極端に高いとはいえません。万引きの件数自体は少しずつ少なくなってはいるものの、十分に警戒が必要です。
万引きが発生しやすい店舗
「万引きが発生しやすい店舗=犯人から見て万引きしやすい店舗」といえます。たとえば、犯行が目撃されにくい死角が多い店舗です。店員の目の前で堂々と万引きをするケースは非常に少ないので、多くの万引きは死角で起こっています。
防犯カメラが設置されていない、ほとんど人が通らない場所がある、従業員から見えない場所がある店舗は狙われやすいといえるでしょう。
また、店員の目が行き届いていないと判断できるポイントがある店舗も狙われやすくなります。たとえば、いつも陳列棚が散らかっていたり、片付けなければならないものが置きっ放しになっていたりするケースです。
犯人から「この店舗なら万引きが発覚しにくい」と認識されると、常習的に狙われるリスクが高まります。
特に注意すべきは、小学生による万引きが多く発生している店舗です。
警視庁の調査によると、小学生の万引き被害はコンビニエンスストアに集中しており、被害品の多くは菓子類や玩具などの少額商品です。
小学校5年生以降になると「子どもだけで買い物をする」割合が6割を超えることからも、子どもにとって気軽に立ち寄れる店舗ほどリスクが高まります。小学生の多くは「万引きは悪いこと」と理解していながらも、「自分が捕まるとは思っていない」傾向があり、見守られていない環境では犯行に及びやすくなります。
こうした実態からも、店舗側の防犯対策は子どもに対しても有効に機能するよう工夫する必要があります。
関連記事:レジに防犯カメラが必要な理由や設置するメリットを解説
参考:万引きに関する調査研究報告書(小学生の万引きに着目した意識調査及び万引き被疑者等に関する実態調査)
万引きに科せられる罰則

万引きは軽い犯罪と思われてしまうことがありますが、第235条「窃盗罪」が適用されることになります。窃盗罪とは、人の財物を窃取した罪のことです。法定刑では10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑と定められています。
ただ、初犯ではなく、常習的に万引きを行っているケースも少なくありません。このような場合、常習累犯窃盗罪に問われる可能性があります。窃盗罪は刑法によって定められているものですが、常習累犯窃盗罪が定められているのは盗犯防止法です。
刑法よりも厳しく処罰されることになります。常習累犯窃盗罪の法定刑は「3年以上の有期懲役」です。懲役刑についても、窃盗罪は下限が1か月、常習累犯窃盗罪は下限が3年と大きく異なります。なお、日常的に万引きを繰り返していたとしても、初犯である場合は常習累犯窃盗罪とはなりません。
それから、悪いことと理解しながらも万引きを繰り返してしまう「クレプトマニア」と呼ばれる依存症があります。依存症は病気です。
だからといって無罪にはならず、実際にクレプトマニアであっても裁判において無罪が言い渡された例はほぼありません。
効果的な万引き対策

万引き被害に悩んでいるのであれば、効果的な対策を検討していきましょう。ここでは、おすすめの対策を5つ紹介します。
防犯カメラの導入
まだ防犯カメラを設置していないのであれば、導入を検討すると良いでしょう。
その際、明らかに防犯カメラと分かるデザインのものがおすすめです。万引き犯は、逮捕を避けるために警戒心を持っています。そのため、十分なセキュリティ対策がされていない店舗を中心にねらいます。
防犯カメラを設置すれば警戒していることを広くアピールできるので、万引き対策として効果的です。多くの万引き犯が防犯の有無や位置を確認したうえで犯行に及んでいるので、抑止力として活用していきましょう。
もちろん、実際に万引きが行われてしまった場合は証拠映像として活用できます。
関連記事:防犯カメラを設置する際のポイントと注意点を徹底解説!
防犯タグの導入
盗まれると大きな被害が出てしまう高価な製品や商品には、防犯タグを取り付けるのもおすすめです。
たとえば、インクタグと呼ばれるものは、解除器を使うことなく無理に取り外した場合にインクが飛び出る仕組みになっています。そのため、万引きしてもタグを外せず、使うことができません。
特にインクで汚れると困るものに取り付けると効果的なので、アパレル系の店舗で多く利用されています。また、無理やりはずそうとすることでアラート音が鳴り響く自鳴タグも効果的です。
防犯ゲートの設置
コストはかかりますが、店舗の出入口付近に防犯ゲートを設置するのも万引き対策として非常に効果的です。未会計の商品を持ったままゲートを通るとアラート音で知らせてくれます。
また、防犯ゲートが設置されているだけでも犯罪の抑止効果が期待できるでしょう。 ダミーのゲートもありますが、設置費用を大きく抑えられる一方でダミーだと見破られてしまった場合にセキュリティ意識の低い店であると思われてしまうリスクがあります。
関連記事:防犯カメラの設置費用についての相場・内訳・ランニングコスト
保安警備業務への依頼
保安警備業務とは、いわゆる万引きGメンのことです。
万引き対策を取っているものの被害がなくならない場合や、犯人を突き止めたい場合に活躍してくれます。
また、大型店やショッピングモールの場合は警備員を置くのも良いでしょう。万引き犯からすると警備員がしっかりと監視をしている状況の中で万引きするのは非常にリスクがあることから、狙われにくくなります。
万引き防犯対策のポスターやPOPの掲載
万引き防止ポスターや注意喚起のPOPは、犯罪抑止に有効なツールの一つです。
警視庁が令和2年に実施した調査では、外国人の方が日本人よりも、店内に掲示されたポスターの内容をしっかりと認識しており、「ポスターの掲示が万引き防止に役立つ」と考える割合も高いことが明らかになっています。
特にフィリピン、アメリカ、イギリスなどではその傾向が強く、ポスターが視覚的に与える印象が大きいと考えられます。
また、ポスターは単なる掲示物ではなく、見た人が「内容を理解し、効果がある」と感じてはじめて意味を持ちます。万引き抑止力を高めるためには、外国人の来店客も意識した多言語対応や、視認性の高いデザインへの工夫も重要です。
参考:万引きに関する調査研究報告書(外国人と日本人の意識の差に関する検討)(警視庁)
なお、警視庁のホームページからポスターデータのダウンロードも可能です。
外国人の視点を意識した対策の重要性
警視庁の調査によると、日本国内での万引きに対する意識は、日本人よりも外国人のほうが多様であり、時には「防犯対策を怠っている店側にも非がある」と感じられることがあります。
例えば、商品を店の外に陳列していたり、スタッフの目が届きにくいレイアウトの店舗は「盗まれても仕方がない」と判断されがちです。
そのため、外国人客の多い地域では、万引き防止の観点から、防犯カメラの設置、店員の声かけ、ポスター掲示などの対策を徹底することがとくに有効です。実際に、防犯カメラやセンサーゲート、警備員の巡回といった措置に対して「効果がある」と認識している割合も外国人の方が高い傾向にあります。
参考:万引きに関する調査研究報告書(外国人と日本人の意識の差に関する検討)(警視庁)
万引き対策に必要な防犯カメラの設置場所

万引き対策のために導入したいのが、防犯カメラです。ただ、防犯カメラをどこに置けば良いのかわからず、悩んでしまうこともあるでしょう。
たとえば、コンビニやスーパーの場合は、陳列棚が確認できる位置をしっかり映せるようにするのがおすすめです。また、死角になっている場所でマイバッグなどに盗んだ品を移し変えるケースが多いので、できるだけ死角を作らないようにしましょう。
その他におすすめの設置場所としては、セルフレジの上や、試着室やトイレの前が挙げられます。それぞれ解説します。
関連記事:防犯カメラの設置場所を決めるときのポイントと設置におすすめの場所
セルフレジの上
近年はセルフレジを導入する店舗が増えてきましたが、自分でレジを通す仕組みを悪用して万引きするケースがあります。価格の安いものだけレジを通して高いものはマイバッグに隠したり、バーコードを手で隠してスキャンするフリだけして不正にレジを通したりする手口などが代表的です。
中には、カートの下段に置いておいた買い物かごや箱のジュース・お酒などをまるごとスキャンせずに持ち帰る手口もあります。
厄介なのは、それがうっかりミスなのか、故意なのか判断しにくいということです。何かあったとき証拠映像として残すためにも、セルフレジの上に防犯カメラを設置しましょう。
試着室やトイレの前
試着室やトイレは密室のため、店内で商品をバッグに隠す行為が発覚しにくい場所です。さすがに、試着室やトイレの中を撮影するわけにはいきません。
しかし、入り口付近に防犯カメラを設置しておけば、試着室やトイレを利用する前後の映像が万引きの証拠になることもあります。
防犯カメラで対策できる万引き以外の犯罪

防犯カメラで対策できるのは、万引きだけではありません。たとえば盗撮や痴漢・強制わいせつといった犯罪を防ぐのにも効果的です。
それぞれポイントを押さえておきましょう。
盗撮
自らが経営するお店で盗撮被害が起こってしまった場合、お店の印象が悪くなるのは防げません。防犯カメラを設置しておけば、店内で盗撮行為をしようとしている人に対する抑止力となってくれます。
盗撮は被害者にバレないようにこっそりと行われるものなので、被害者自身が盗撮されていることに気づいていないケースも少なくありません。こういったケースでもスマホなどで盗撮している姿が防犯カメラに記録されており、逮捕につながった事例もあります。
痴漢・強制わいせつ
痴漢や強制わいせつを防ぐためにも防犯カメラが役立ちます。
これらの犯罪は周りに被害者以外の人がおらず、人の目の届かない場所で行われやすいといえるでしょう。
ですが、防犯カメラを設置しておくことにより、犯人に警戒心を抱かせることができます。犯人にとってカメラで自分の姿を撮影されている状態で痴漢や強制わいせつ行為を行うことは非常にリスクがあるはずです。
犯罪を未然に防ぐためにも防犯カメラを役立てましょう。もちろん、こういった行為があった場合でも、防犯カメラで撮影できていれば証拠として活用可能です。
このように、防犯カメラを設置することはお店だけではなく、来店してくれているお客様を守ることにもつながります。お店としての信頼性も高まるでしょう。
万が一に備えたいと考えている方は、お客のためにも防犯カメラを設置してみてはいかがでしょうか。
万引き犯は防犯カメラを警戒している

いかがだったでしょうか。
万引き対策として防犯カメラは効果的なのか、どのような対策を取っていけば良いのかなどについて紹介しました。万引きがどのような罪なのかについてもご理解いただけたはずです。
万引き犯は犯行がバレたり捕まったりすることを恐れているので、防犯カメラの設置は大きな抑止力になります。ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
防犯カメラ設置のフリーウェイズネットワークでは、さまざまな種類の防犯カメラを取り扱っており、施工・取付工事は全国対応です。
導入に関して不安なことやわからないことがあれば、お気軽にご相談ください。
監修者

代表取締役社長 川口
<資格>
第2種電気工事士
<略歴>
2006年 Scotch College Adeladeを卒業後に帰国し、東証一部上場企業の営業代行会社を立ち上げる。2010年にフリーウェイズネットワーク株式会社へ中途入社し現在に至る。
<代表メッセージ>
弊社は2009年の創業以来、セキュリティを通じてお客様に安心安全を提供することを使命として歩んでまいりました。
社会を取り巻く現状は急速に変化しており、安全安心の課題も見受けられます。
弊社はこのような変化に迅速に対応すべく最先端の知識を習得し、社会に貢献できる企業として、今後とも邁進してまいります。